フランス

フランスは地方色が豊かな国で、それぞれの地域圏や町によって様相が大きく変わるのが面白い。

ノルマンディー(Normandie)

フランス北西部地方で、パリから車で2〜3時間で行くことが出来る。画題の宝庫だ。海沿いのオンフルールやドーヴィル・トゥルーヴィルなどが有名だが、内陸にも魅力的な場所は多い。

オンフルール(Honfleur)

オンフルールは観光の町で、絵になりすぎるというか、画題としてはいささか通俗的な面もあるが、建物・海・空の3つのバランスが素晴らしく、何度でも描きたくなってしまうところだ。

 

オンフルール旧港、ヨットハーバーから北を向いて旧総督の館を入れた構図。写真の時間帯は午後~夕刻なので、向かって右側の建物に陽があたる。

 

 

旧港の同じ場所から、こちらは早朝。夕刻とは光線が真逆で面白いが、光は刻々と変わるので制作は時間との勝負だ。風がない日は海面が鏡のようになって美しい。

 

ドーヴィル・トゥルーヴィル(Deauville-Trouville)

ドーヴィルとトゥルーヴィルというふたつの町の総称。ノルマンディー地方有数の観光地で、ビーチやカジノ、映画祭で有名な港町。パリから200キロ、オンフルールから30分ほど。映画「男と女」の舞台にもなった浜辺は時間帯によって大きく潮が引いていき、様相が一変する。

 

真夏には浜辺に色とりどりのビーチパラソルが並ぶ。砂質は細かく柔らかい。

 

ドーヴィル側には緑色の、トゥルーヴィル側には赤色の灯台が立っている。この日は9月も下旬で、晴天ながら鮮やかさは抑えられたノルマンディーらしい色彩の海と空だった。

 

ドーヴィルのビーチから少し離れたところにヨットハーバーがある。夕刻になると様々な種類のヨットが戻ってくるので見ていて飽きない。写真は19時くらいの時間帯。傾きかけた太陽からの落ち着いた光は、昼間とはまた違って美しい。

 

エトルタ(Étretat)

エトルタは白亜の断崖で有名な村。オンフルールからは1時間半ほど。苦労して崖の上に登ると、眼前には絶景が広がる。上は比較的平らでゴルフ場もあるほどだが、ところどころで崖崩れが。柵もなにも無いので、落ちないよう気をつけながら制作。

 

同じくエトルタ。崖から下に降りてみると、エトルタは人口1500人ほどの、崖に挟まれるように存在している小さな村だ。ビーチは小石のような砂利。ボードウォークと海との距離が近く、動きのある構図ができる。

 

ディエップ(Dieppe)

ディエップはオンフルールなどよりもさらに北にある港町。上に挙げた他のノルマンディーの都市に比べるとずいぶんと無愛想な街並みだ。観光客の数も少ない。一望できる丘があったので、その上に登っていき制作した。

 

曇り空のイメージが強いノルマンディー地方だが、快晴の日は海の色も驚くほど鮮やかだ。観光案内所のあたりからヨットハーバーと崖の上の教会を描く。

 

停泊しているヨットにも様々な種類・形があることがわかる。バックの建物など、どことなくオンフルールを思わせる情景だ。

 

レ=ザンドリ(Les Andelys)

レ=ザンドリ(Les Andelys)はパリとオンフルールあたりとのちょうど中間に位置する町。大きく蛇行するセーヌ川と、中洲の島に刺さるような教会の尖塔が印象的な情景だ。

 

この情景はガイヤール城近くの駐車場から見渡すことが出来る。人もあまりやってこない場所で、聞こえるのは鳥の声くらいだった。

 

レ=ザンドリで出くわした屋外制作のグループ。欧州中から数日間の制作のため集まっているそう。ほかにもジヴェルニー等に行くらしい。使っている画材や日差し対策、道具の工夫などそれぞれバラバラで、見ていると楽しい。

 

ノルマンディーその他

エトルタからさらに北に進むとイポール(Yport)という港町がある。このあたりは似たような石灰岩の断崖がずっと続いている。はるか向こうにフェカン(Fecamp)の街が見える。

 

 

ヴィレルヴィル(Villerville)という、トゥルーヴィルとオンフルールの中間にある村。路地の向こうに見える水平線に惹かれて制作。

 

 

 

 

ヴァランジュヴィル=シュル=メール(Varengeville-sur-Mer)はディエップから西に約5キロのところにある。海沿いに位置しているが、崖の上にあるため港などはない。写真はサン=ヴァレリー教会の裏手から海を見下ろす構図で。崖の上にポツンと建つ教会が印象的だ。ここにはジョルジュ・ブラックの墓もある。

 

 

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コート・ダジュール(Côte d’Azur)

ニースを中心とした紺碧海岸コート・ダジュール。パリから800キロほど離れており、車で10時間、電車で5−6時間、飛行機で1時間。カンヌからマントンまでの約60キロ、そして北の山間の町を含めたアルプ=マリティーム県には様々な画題があふれている。気候も温暖で恵まれた土地だ。

アンティーブ(Antibes)

アンティーブ(Antibes)はカンヌとニースの中間にある海沿いの町。城壁跡に囲まれた旧市街や豪華クルーザーの停泊するヨットハーバー、白砂のビーチなど見どころは多い。

 

考古学博物館のスロープを登ったところからピカソ美術館のほうを見て描く。時間帯は夕方で、光が旧市街に当たり美しい。

 

グリマルディ城を改装して出来たピカソ美術館を見上げる構図で。写ってはいないが、右側はド・スタールの最期のアトリエ。

 

ヨットハーバー越しに灯台と要塞(Fort Carré)を捉えた構図で。天気が良いと遠くアルプス山脈やニースの街並みも見える。

 

手前は小さめのヨットが並び、灯台の奥のほうには豪華クルーザーが停泊している。

 

サン=ポール=ド=ヴァンス (Saint-Paul-de-Vence)

サン=ポールは丘の上にある小さな村。ニースから北西に20キロほどのところにある。城壁に囲まれた旧市街の中には細い路地や坂道が迷路のように広がっている。村の入口に車を停め、中には徒歩で入る。

 

マーグ財団美術館方面からサン=ポールを見る。まだ朝なので太陽は向かって左奥にあり、村のシルエットはほぼ逆光だ。遠くには地中海の水平線も見える。

 

村の入口付近から、見上げるような構図で。サン=ポールは鷲ノ巣村のなかでも整理された観光地だ。公衆トイレや水飲み場(L’eau potable)が充実しており、一日中滞在していても不便を感じたりということはなかった。

 

村の北側から遠くサン=ジャネの頂きを望む。よく見ると岩山の途中にも集落が点在している。眺めるぶんにはいいが、実際にそこに住むのは大変だろう。

 

夕方7時過ぎ。朝と同じくマーグ財団美術館のほうからの眺めだが、太陽光が真逆になっていて西日が美しく村を照らしている。

 

カンヌ(Cannes)

映画祭で有名なカンヌ。コート・ダジュールではニースに次ぐ大きな街だ。目抜き通りのラ・クロワゼット通りから、手前のビーチと向こうに少し盛り上がった旧市街、シュケの丘を描く。

 

絵のモチーフとしてのカンヌは、海・山・街・人のバランスがとれた場所だ。

 

マントン(Menton)

イタリア国境に接するマントン。ニースやカンヌほど大きくなく、どこか親しみやすい街だ。建物もイエローオーカーやピンクで、ちょっとフランスとは思えない色合い。歩いているだけで楽しい気分になってくる。

 

街の高台から見下ろす構図で。マントンの建物は固有色が強くそれだけで絵画的なのだが、逆に色を自由に使える油彩画でそれを表現するのは難しい。

 

街の象徴サン・ミシェル・アルシャンジュ教会と、その後ろにそびえるウルス山。コート・ダジュールの海沿いの街で、ここまで山が近くにあるのは珍しいのではないだろうか。

 

ヴィルフランシュ=シュル=メール(Villefranche-sur-Mer)

ヴィルフランシュはニースから東へ6キロほどにある小さな町。オレンジやピンクに塗られた建物が、丘の斜面にびっしりと集まっている。車の駐車スペースがほとんどなく、パーキングには苦労した。

 

波の少ない落ち着いたビーチとはどちらかというと年配の人が多く、ヒップホップがガンガン流れていたりということはなかった。

 

エズ村(Èze Village)

崖の上の村、エズ(写真の左上)。なぜこのようなところに村を?と思うが、かつて異国の敵から守る防衛の意味もあったという。いまは異国からの観光客でいっぱいだ。

 

村を見下ろすポイントから。傾斜度30度の細い坂道を延々と登っていき、ようやくたどり着く。この周辺は高級別荘が点在するエリアだ。

 

村の植物園に入り、細い階段を登って村の頂上に出るとおなじみの絶景ポイントに着く。晴天の午前中はサン=ジャン=カップ=フェラの岬もよく見える。

 

この光景を求め、世界中から観光客が集まってきている。

 

村の中は細い路地と階段、坂道の連続で迷宮のよう。教会裏の墓地からフェンス越しに村や植物園と、その下にひろがる海を描いた。

 

コート・ダジュール(アルプ=マリティーム県)その他

カロ村(Carros Village)。山間のこぢんまりとした鷲ノ巣村だ。歩いている観光客はほとんどいない。

 

宿泊していた町、ガティエール(Gattières)。鷲ノ巣村だが愛想はなく、ほとんど観光に力を入れていない印象だった。地元の人が集まる小さな広場で。

 

サン=ジャネ(Saint-Jeannet)。険しい岩山の麓に作られた鷲ノ巣村だ。上のカロ村もガティエールもサン=ジャネも車で15分足らずで行き来できる。

 

 

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プロヴァンス(Provence)

パリから車で7時間ほど。温暖な気候に恵まれた土地。オリーブ畑やぶどう畑が広がる平野、急峻な岩山、そして崖の上に建てられた鷲ノ巣村・・。画題は多く、見どころに事欠くことはない。

ゴルド(Gordes)

プロヴァンスのリュベロン地域圏の町。崖の上にらせん状に道が走り、そこに沿うように建物がびっしりと並んでいる。まるでロード・オブ・ザ・リングに出てくるミナス・ティリスのようだ。

 

少し離れたところから全体を一望できるポイントがあったので、そこから制作。

 

ボニュー(Bonnieux)

同じくリュベロン地域圏にあるボニュー。町に入ると上り坂が続いており、そのまま上っていき中央の高台のあたりから見下ろしの構図で。落ち着いた夕方の光が美しい。

 

ルシヨン(Roussillon)

赤土や黄土(オーカー/オークル)の土壌に建てられた町、ルシヨン。町全体がピンク色に染まっている。遠望のポイントがなかなか見つからず、駐車場付近から描いた。

 

モーベック(Maubec)

宿泊していた村、モーベック。ゴルドやルシヨンと違って観光客はゼロだ。暑い日中は出歩く人もほとんどいない。岩山をバックに古い教会や時計塔が風情を醸し出している。時計の針は12:20を指したままピクリとも動かない。

 

 

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ブルゴーニュ(Bourgogne)

ブルゴーニュ地方はパリから東南に2時間ほどの、ワインで有名な丘陵地帯。車を走らせていると、見渡す限りのワイン畑、小麦畑、菜の花畑、ひまわり畑が止めどなく続いて、巨大な大地のタペストリーを見ているかのようだ。

ヴェロン村(Véron)

ヴェロン村(Véron)は人口2千人ほどの小さな村だ。高台の上に登っていくと、少し村を眺望できる場所がある。

 

平屋の建物がなだらかな大地の上に点在していて、ひたすら横へ横へと拡がっていく情景だ。

 

教会へと続く道。店や施設も集まっていて、村の中心部だ。

 

教会を斜め後方から。1600年頃に建てられた素朴な教会で、現在でもミサや結婚式や各種祭事にと、村の中心の役割を果たしている。

 

サンス(Sens)

サンス(Sens)は人口2万人ほどの町。その中心を流れるヨンヌ川のほとりに12世紀後半に建造されたというサン・モーリス教会は建っている。川沿いの教会は珍しく、加えて川岸に接するように建っているので、そこに目を引かれて制作。

 

ヴェズレー(Vézelay)

ヴェズレーはブルゴーニュ地方きっての古都である。丘の上に建つ町なので、見上げたり見下ろしたりと動きのある構図が取れる。写真はヴェズレーからアスカン(Asquins)の町を見下ろす情景。

 

逆にサン=ペール(Saint-Père)の村からヴェズレーを見上げる構図。サント=マドレーヌ大聖堂が小さく見える。

 

同じくサン=ペール(Saint-Père)。立派なゴシック様式の教会が建っていた。

 

スミュール=アン=ノーソワ(Semur-en-Auxois)

スミュールはヴェズレーの東に位置する、アルマンソン川に囲まれた高台の上に建つ町。起伏に富んでいて絵の題材としては魅力的だ。ピナール橋とその上方に見えるノートルダム教会を見上げる構図で。

 

スミュールの町を少し遠くから。こうしてみると塔や城壁に囲まれた城塞都市だったことがわかる。

 

ブルゴーニュその他

ヴィルヌーヴ=シュル=ヨンヌ(Villeneuve-sur-Yonne)の高台から。ゆるやかな丘陵地帯が拡がっている。

 

グロン(Gron)の名もなき通り。シンメトリーの構図に惹かれて制作。

 

 

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その他(Les autres endroits)

サンリス(Senlis)

サンリスはパリからは車で1時間ほどで着く中世の街。街全体が静かで人もあまりいなく、時間がゆっくりと流れる印象。12世紀頃に建てられた王宮の跡地で。

 

シャルトル(Chartres)

聖堂で有名なシャルトル。A11の高速道路を降りると遠くに聖堂が現れる。写真は町中に入る手前のポイントから遠望の構図で。

 

シャルトルは町中を流れるユール川や運河も魅力的だ。多くの観光客は大聖堂周辺に向かうので、この周辺は静かな情景が広がっている。

 

シャルトルも街のあちこちに公衆トイレや手洗い場が設置してあり、取材しやすい場所だ。

 

 

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