フランス北部

フランスには大きく分けて13の地域圏があるが、その中でも制作に訪れたことがある半分から北に位置する場所を紹介。

ノルマンディー(Normandie)

フランス北西部に広がるノルマンディー地域圏。パリから車で2〜3時間で行くことが出来る、画題の宝庫だ。海沿いのオンフルールやドーヴィル・トゥルーヴィルなどが有名だが、内陸にも魅力的な場所は多い。

 

オンフルール(Honfleur)

古くから画家たちに愛されてきた町、オンフルール。少し絵になりすぎるところもあるが、建物・海・空の3つのバランスが素晴らしく、何度でも描きたくなってしまうところだ。

 

オンフルール旧港、ヨットハーバーから北を向いて旧総督の館を入れた構図。写真の時間帯は午後~夕刻なので、向かって右側の建物に陽があたる。

 

旧港の同じ場所から、こちらは早朝。夕刻とは光線が真逆で面白いが、光は刻々と変わるので制作は時間との勝負だ。風がない日は海面が鏡のようになって美しい。

 

ドーヴィル・トゥルーヴィル(Deauville-Trouville)

ドーヴィルとトゥルーヴィルというふたつの町の総称。ノルマンディー地方有数の観光地で、ビーチやカジノ、映画祭で有名な港町。パリから200キロ、オンフルールから30分ほど。映画「男と女」の舞台にもなった浜辺は時間帯によって大きく潮が引いていき、様相が一変する。

 

真夏には浜辺に色とりどりのビーチパラソルが並ぶ。砂質は細かく柔らかい。

 

ドーヴィル側には緑色の、トゥルーヴィル側には赤色の灯台が立っている。この日は9月も下旬で、晴天ながら鮮やかさは抑えられたノルマンディーらしい色彩の海と空だった。

 

ドーヴィルのビーチから少し離れたところにヨットハーバーがある。夕刻になると様々な種類のヨットが戻ってくるので見ていて飽きない。写真は19時くらいの時間帯。傾きかけた太陽からの落ち着いた光は、昼間とはまた違って美しい。

 

エトルタ(Étretat)

エトルタは白亜の断崖で有名な村。オンフルールからは1時間半ほど。クールベやモネも描いた浜辺からの構図も良いが、崖の上から見渡せる絶景が見どころだ。上は比較的平らでゴルフ場もあるほどだが、ところどころで崖崩れが。柵もなにも無いので、落ちないよう気をつけながら制作。

 

午前中から昼過ぎまでは断崖の影が浜辺や海に現れる。その色のトーン変化が美しい。

 

崖から下に降りてみると、エトルタは人口1500人ほどの、崖に挟まれるように存在している小さな村だ。ビーチは小石のような砂利。ボードウォークと海との距離が近く、動きのある構図ができる。

 

ディエップ(Dieppe)

ディエップはオンフルールなどよりもさらに北にある港町。上に挙げた他のノルマンディーの都市に比べるとずいぶんと無愛想な(つまり普通な)街並みだ。観光客の数も少ない。一望できる丘があったので、その上に登っていき制作した。

 

曇り空のイメージが強いノルマンディー地方だが、真夏の快晴の日は海の色も驚くほど鮮やかだ。観光案内所のあたりからヨットハーバーと崖の上の教会を描く。

 

停泊しているヨットにも様々な種類・形があることがわかる。バックの建物など、どことなくオンフルールを思わせる情景だ。

 

レ=ザンドリ(Les Andelys)

レ=ザンドリ(Les Andelys)はパリとオンフルールあたりとのちょうど中間に位置する町。ここもノルマンディー地域圏に属する。大きく蛇行するセーヌ川と、中洲の島に刺さるような教会の尖塔が印象的な情景だ。

 

この情景はガイヤール城近くの駐車場から見渡すことが出来る。人もあまりやってこない場所で、聞こえるのは鳥の声くらいだった。

 

レ=ザンドリで出くわした屋外制作のグループ。欧州中から数日間の制作のため集まっているそう。ほかにもジヴェルニー等に行くらしい。使っている画材や日差し対策、道具の工夫などそれぞれバラバラで、見ていると楽しい。

 

ノルマンディーその他

エトルタからさらに北に進むとイポール(Yport)という港町がある。このあたりは似たような石灰岩の断崖がずっと続いている。はるか向こうにフェカン(Fecamp)の街が見える。

 

ヴィレルヴィル(Villerville)という、トゥルーヴィルとオンフルールの中間にある村。路地の向こうに見える水平線に惹かれて制作。

 

ヴァランジュヴィル=シュル=メール(Varengeville-sur-Mer)はディエップから西に約5キロのところにある。海沿いに位置しているが、崖の上にあるため港などはない。写真はサン=ヴァレリー教会の裏手から海を見下ろす構図で。崖の上にポツンと建つ教会が印象的だ。ここにはジョルジュ・ブラックの墓もある。

 

コカンヴィリエ(Coquainvilliers)という、ドーヴィルから30キロほど南にある村に滞在した。馬や牛のいる農場が広がるのどかな風景だ。宿の敷地内で描かせてもらったが、気になるのか、家主さんが何回も進み具合を見に来るのがフランスらしい。

 

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ブルゴーニュ(Bourgogne)

ブルゴーニュ地方はパリから東南に2時間ほどの、ワインで有名な丘陵地帯。車を走らせていると、見渡す限りのワイン畑、小麦畑、菜の花畑、ひまわり畑が止めどなく続いて、巨大な大地のタペストリーを見ているかのようだ。

 

ヴェロン村(Véron)

ヴェロン村(Véron)は人口2千人ほどの小さな村だ。三岸節子のアトリエが今も残り、そこに滞在させてもらった縁から何回か訪れた。高台の上に登っていくと、少し村を眺望できる場所がある。

 

平屋の建物がなだらかな大地の上に点在していて、ひたすら横へ横へと拡がっていく情景だ。

 

教会へと続く道。店や施設も集まっていて、村の中心部だ。

 

教会を斜め後方から。1600年頃に建てられた素朴な教会で、現在でもミサや結婚式や各種祭事にと、村の中心の役割を果たしている。

 

サンス(Sens)

サンス(Sens)は人口2万人ほどの町。その中心を流れるヨンヌ川のほとりに12世紀後半に建造されたというサン・モーリス教会は建っている。川沿いの教会は珍しく、加えて川岸に接するように建っているので、そこに目を引かれて制作。

 

ヴェズレー(Vézelay)

ヴェズレーはブルゴーニュ地方きっての古都である。丘の上に建つ町なので、見上げたり見下ろしたりと動きのある構図が取れる。写真はヴェズレーからアスカン(Asquins)の町を見下ろす情景。

 

ヴェズレー近郊の村、サン=ペール(Saint-Père)からヴェズレーを見上げる構図。サント=マドレーヌ大聖堂が小さく見える。

 

同じくサン=ペール(Saint-Père)。立派なゴシック様式の教会が建っていた。

 

アスカン(Asquins)

ヴェズレー近くにある人口300人ほどの小さな村、アスカン。滞在していた宿の敷地内には家主さんの飼い馬がいて、ゆったりと過ごしている。お願いしてうまく画面に収まるように馬桶を置いてもらい、食べている間に一気に制作。

 

同じくアスカンの滞在していた部屋の中。梁もむき出しのインテリアは外光が柔らかく入ってきて雰囲気抜群。室内で油絵を描かせてもらえたのでありがたかった。

 

アスカンの教会横に生えている木を描く。早朝の太陽が登り始めた静かな時間帯だ。

 

スミュール=アン=ノーソワ(Semur-en-Auxois)

スミュールはヴェズレーの東に位置する、アルマンソン川に囲まれた高台の上に建つ町。起伏に富んでいて絵の題材としては魅力的だ。ピナール橋とその上方に見えるノートルダム教会を見上げる構図で。

 

スミュールの町を少し遠くから。こうしてみると塔や城壁に囲まれた城塞都市だったことがわかる。

 

ブルゴーニュその他

ヴィルヌーヴ=シュル=ヨンヌ(Villeneuve-sur-Yonne)の高台から。ゆるやかな丘陵地帯が拡がっている。

 

グロン(Gron)の名もなき通り。シンメトリーの構図に惹かれて制作。

 

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ブルターニュ(Bretagne)

フランス西部のブルターニュ地方。2022年の夏に初めて制作に訪れたが、無骨な自然と美しい町が共存している印象だ。

トレガステル(Trégastel)

奇岩が並ぶビーチで有名なトレガステル。潮が引ききって遠浅になった砂浜にイーゼルを立てて制作。

 

夢中になって筆を動かしているとあっという間に時間が経ち、今度は潮が満ち始めるので注意が必要だ。

 

エルキー(Erquy)

エルキーはブルターニュの北側にある町。町の中腹から少し見下ろす構図で描いてみた。

 

その他(Les autres endroits)

シャルトル(Chartres)

聖堂で有名なシャルトル。国道D910を走るとはるか遠くに聖堂が現れる。写真は町中に入る手前のポイントから遠望の構図で。

 

シャルトルは町中を流れるユール川や運河も魅力的だ。多くの観光客は大聖堂周辺に向かうので、この周辺は静かな情景が広がっている。

 

シャルトルも街のあちこちに公衆トイレや手洗い場が設置してあり、取材しやすい場所だ。

 

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