ギリシャ(キクラデス諸島)旅行記2020

新型コロナで落ち着かない状況ではあったが、2019年に引き続き、2020年9月にギリシャの島々を取材した。滞在したのはサントリーニ島、シフノス島、ミロス島の3つ。昨年に比べて旅行者の数は圧倒的に少なく、訪れる側にとってはありがたいシチュエーションであった。

ギリシャには滞在していたパリからトランサヴィア航空で向かう。オルリー空港からサントリーニ島までは直行便で3時間半だ。観光大国のギリシャは7月から外国人旅行者の受け入れを再開しており、この時点(9月上旬)ではEU圏および諸外国11カ国(日本やタイ、カナダなど比較的感染拡大を抑え込めているとされる)の居住者の渡航が認められていた。ただ事前にPLFという旅客追跡フォームをオンラインで提出する必要があり、その後ギリシャ政府から送られてくる認可のQRコードを搭乗時に提示しないと渡航できない仕組みになっている。また入国を認められている国々のリストも、それぞれの国内の感染状況により14日毎に更新されるので直前まで気を抜くことはできない。なおベルギーやスペインからのフライトの場合は72時間以内に発行されたPCR検査陰性証明書が必要だが、この時点でフランスからの便に関しては不要であった。しかしギリシャ国内到着時に空港でランダムにPCR検査を実施する可能性があるとのことで、いくつかの不安を抱えての渡航となってしまった。

 

機内はフランスからの旅行者で満席だった。ほぼ全員がフランス人かギリシャ人で、東洋人は自分ひとり。当然機内でのマスク着用は義務だが、コロナの夏でも皆テンションが高めで楽しそうなのが印象的だ。バルカン半島を過ぎてエーゲ海上空に差しかかると眼下には海と島々の姿が現れる。

滞在1日目〜3日目 ピルゴス(サントリーニ島)

オルリー空港を朝の8:40に発ち、サントリーニのティラ空港には現地時間の12:50に到着する。空港は島の東側にあり、直前まで海の上すれすれを飛んでから小さな滑走路に着陸する。

 

タラップを降りて到着ゲートに進むと、係員が乗客を左右に分けている。右側がランダムPCR検査組、左の階段を登るように指示されているのは非検査組だ。緊張の一瞬だったが、願いは叶わず検査組に割り振られてしまった・・検査組の人数は全乗客の3割ほどだろうか。どうやら旅客追跡フォーム(PLF)の番号で、最初から検査の有無は決まっていたようだ。フェイスシールドと防護服の看護師に綿棒のような検査キットを喉奥に差し込まれる。検査自体は15秒ほどで終わり開放されるが、結果が出るまではなるべく滞在先から出歩かないように要請される。もし陽性判定の場合は24時間以内に連絡が来るとのことだ。そのときはどこかの施設に14日間留め置きとなる・・もちろん絵も描けない。無自覚感染や偽陽性ということもありえるので、さっそく心配事を抱えながらの滞在スタートとなってしまった。

 

いささか暗い気分で荷物を受け取り空港を出て、乗り場でタクシーに乗り込み最初の滞在先のピルゴスへ向かう。運転手にジョニーカフェ(宿のスタッフとの待ち合わせ場所)へお願いと言うと、嬉しそうに「ピルゴスは島で一番いい町だよ。ジョニーカフェには自分も今朝行ってたよ」と言う。確かに着いてみるとこぢんまりと落ち着いた雰囲気の漂う町だった。

 

宿はLadas Pyrgosという、キッチン付きのアパートメントタイプだ。宿のスタッフに使い方をひと通り説明してもらう。広々として窓もたくさんあり、バルコニーにはジェットバスまで付いている。PCR検査の対象者は基本的に結果が出るまではおとなしく待機となっているが、とてもそういう訳には行かず、早速付近を散策することにした。

 

歩いて1分のところにパン屋で昼食を買う。また近所のミニスーパーで水やビールも購入。宿の近くにあるスーパーを見つけるのは、着いてまず最初にやることのひとつだ。なお屋外でのマスク着用は任意だが、店内や公共の場所では義務となっている。

 

宿のバルコニーからさっそく描く。ジェットバスはありがたく筆洗いに活用させてもらうことにした。それにしてもスマホに通知が来るたびに検査の結果かとビクビクしてしまう。なお陰性の場合はとくに連絡がないそうだ。

 

ピルゴスの町は標高が高く、高台に登ると遠くにフィラやイメロヴィグリ、そしてはるか向こうにイアの町まで見渡すことができる。日没時の情景も魅力的で、まだ着いてから一日も経っていないのにすっかり気に入ってしまった。

 

夜9時ころにドンドン音がするのでバルコニーに出てみると花火が上がっている。朝は5時起きだったし初日からいろいろ重なったので、夜11時ころには休むことにする。

 

翌朝は近所のパン屋でパイやカフェラテを買ってくる。宿からとても近く、小麦の焼ける香ばしい匂いが部屋の中にまで漂ってくる。

 

高台に登っていき、教会を入れて見渡す構図で何枚か描く。出会う旅行者の数は少ない。今年のサントリーニ全体がこうなのか、ピルゴスに訪れるひとがもともと少ないのか。この時点ではまだわからないが、いずれにしても描く側にとっては集中できるので言うことなしの状況だ。

 

通りの塀などを利用してお土産を売っている。魚・ネコ・正教会・・モチーフは身近なものが多いようだ。ほかに青い目玉のような魔除けも多く見かける。

 

窓からの眺めのいい部屋を選んだので、窓越しに何枚か描く。そうこうしているうちに到着してから24時間以上が経っていた・・気になるPCR検査の結果だが、とくに連絡がなかったのでこれは陰性だったと考えて良いのだろう!これで安心して2週間制作に集中できる。良かった良かった。

 

ピルゴスには2泊して、3日目の11時に宿をチェックアウトする。宿のスタッフに鍵を渡してお別れを言う。オーナーのマリアさんがサントリーニワインを1本プレゼントしてくれた。ピルゴスはワイン畑に囲まれており、サントワインの名産地だそう。お礼を伝え、次の場所フィロステファニへ向かう。バス停でのんびり1時間ほど待ち、フィラ行きのバスに乗った。

 

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滞在3日目〜5日目 フィロステファニ(サントリーニ島)

サントリーニの中心地、フィラの町から北に20分ほど歩くとフィロステファニの町がある。そこの一軒家のアパートメント“Rosemary sweet house”に2泊する。事前にGoogleマップの座標を教えてもらっていたので、それを頼りにテクテク歩き、無事たどり着いた。家主のエイリー二さんから部屋の説明を受ける。つい最近改装されたようで、インテリアはパステルカラーの可愛い感じのもので統一されている。

 

サントリーニ島は3600年前の海底火山の大噴火で出来たカルデラの島だ。部屋の目の前は外輪山の縁を走るハイキングコースになっており、そこを超えると眼前に内海(かつての噴火口)が現れる。中央に浮かぶ不思議な形のネア・カメニ島は無人の火山島だ。

 

宿から北に向かい、スーパーへの買い出しを兼ねてイメロヴィグリの町へ向かう。去年は急ぎ足で通り過ぎただけだったので、今年はじっくり散策することができて嬉しい。しかし旅行者が少なく、あらためて今回の異常事態に驚く。湾にいくつも停泊していた大型客船やクルーザーも今年はゼロだ。

 

時刻は夕方6時をまわり、日が傾いてくる。宿を出たハイキングコースのあたりから、夕日に照らされたフィラの町を描く。情景の持つスケールの大きさがなかなか画面に伝わらずもどかしさを感じるが、繰り返し描くうちに少しずつ捉えられてきたような気がする。

 

キッチン付きのアパートメントなので、買ってきたギロピタにトマトサラダで夕食にする。

 

翌日もイメロヴィグリのあたりを描く。崖の斜面にひしめき合っている純白の建物は、そのほとんどが旅行者・滞在者向けの高級アパートメントホテルだ。

 

時々宿に戻り、部屋の窓越しの情景を描く。窓の外にはローズマリーにブーゲンビリア、オリーブの木が見える。

 

付近をウロウロしている犬がやってくるので、ランチの残りを分ける。おとなしく温厚な犬で、しばしのあいだ遊び相手になってくれる。

 

日没前にはイメロヴィグリ方面を散策する。せっかくのサンセットビューが自慢のレストランやバーもガランとしていて、なんだか気の毒になってしまう。

 

滞在5日目。フィロステファニの最終日だ。今日は17時の船で次の島、シフノス島に移動することになっている。宿のスタッフからは次の宿泊客はいないのでゆっくりチェックアウトして構わないと連絡が来る。お言葉に甘えてゆっくり散策と制作を繰り返し、フィラの町に向かう。港まではここからバスで30分ほどのルートだが、乗り場は閑散としている。どうやらのんびりしすぎて港行きを逃してしまったようだ!次のバスは約2時間後でとても間に合わない。それならタクシーと乗り場に向かうも、当然のように一台も停まっていない・・仕方なくまずは港方面へ歩くことにする。途中で流しのタクシーを捕まえるかヒッチハイクで誰かに乗せてもらうことを期待するしかない。

 

フィラから港方面へ、Googleマップを頼りに何もないエリアをひたすら歩く。途中で空車のタクシーとすれ違うので「おーい」と手を振るが、挨拶していると思われるのかドライバーもにっこり手を振ってそのまま猛スピードで通り過ぎてしまう。タクシー乗り場以外で客を乗せる習慣がないようだ。仕方ないのでヒッチハイクに切り替えると、5台目くらいで成功!親切なお兄さんが停まってくれた。

 

ポート(港)までお願いすると、こころよく連れて行ってくれた。考えてみるとCOVID-19が世界的に蔓延しているなか、よく東洋人のヒッチハイカーを乗せてくれたものだ。20分ほどで港に着き、降りるときに10ユーロを渡し感謝を伝える(20ユーロと迷ったが)。「エフハリスト!(ありがとう)」

 

昨年と比べるとやはり少ないが、さすがに港、旅行者がそこそこ集まっている。定刻から30分ほど遅れてシフノス島行きの高速船がやってきた。発熱の有無等のチェックシートに記入し、マスクをつけて乗船する。

 

高速船はフェリーと違い、デッキに出たりすることは出来ない。旅情という点で少し味気ないが、ともあれ目的地までは早く着く。シフノス島には20時過ぎに到着。港の町カマレスでトマトやパン・水を買い、家主のダフネさんに電話する。昨年も泊まったプラティの宿は少々僻地にあるので、バスでアルテモナスの町まで行き、そこまで車で迎えに来てもらうことになった。

 

21時過ぎに到着。外はもう真っ暗だ。ご主人のトマスさんが魚(鯛)のオーブン焼きを用意してくれていた。パンやトマト、甘口のサントリーニワインと一緒にいただく。なにはともあれ無事にシフノス島に着いて良かった。

 

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滞在5日目〜9日目 プラティ(シフノス島)

シフノス島では昨年も泊まったこのプラティのGuesthouse Poulatiに4泊する。建物右側の離れが客室、左が大家さんの家。周囲には何もなく、静かで心地よくとても気に入っているゲストハウスだ。COVID-19の関係でどうやら数カ月ぶり(今年最初?)の滞在者らしく、日用品が切れているのであとで補充しなければならない。

 

午前中のいい光が部屋に入ってくる。昨年そして今年と似た構図で何枚か描いたが、飽きない。

 

昼過ぎに最寄りのスーパーマーケットに買い出しに行く。トマトやレモンははちきれそうな新鮮さだ。塩・オリーブオイル・バルサミコ酢・コーヒー・牛乳・はちみつ・ヨーグルト・惣菜・オリーブ・ケッパー・ビール。

 

宿に戻ってランチ。このプラティの宿は居心地は良いのだが、いささか辺鄙な場所にあるので、徒歩の場合は食料の買い出しがちょっと大変だ。なにしろ最寄りと言ってもいちばん近くのスーパーマーケットまで40分ほどかかる。

 

ギリシャで食べるギリシャヨーグルトは格別の味。はちみつをかけていただく。乳脂肪分の含有量が2%、5%、10%と3種類ほどある。写真のは一番ヘビーな10%。

 

夕刻が近づく。歩いて数分のプラティの修道院を描く。周りにはまったく誰もいないエリアだ。

 

昨年もよく遊んだネコたちが今年も健在で嬉しい。子猫だったのが少し体が大きくなっているようだ。とにかく暇を持て余しているようで、すぐに部屋に入ってきたり食べ物をねだったりとまとわりついてくる。灰色はやんちゃで白黒のは温厚な性格だ。

 

3日目はプラティの修道院まで行き、そこから海沿いのトレッキングコースを歩いてカストロの村まで向かう。40分ほどの道のりだが、誰一人としてすれ違う人はいなかった。

 

カストロの村の裏手にひっそりと佇むChurch of the seven mytrys(7人の殉教者教会)を描く。

 

カストロ村の路地を描く。静かで落ち着いた村。地面のキクラデス様式の文様柄が印象的だ。

 

4日目はまずアルテモナス方面まで40分ほど歩いて向かう。水平線までひろがる青い海は、牛たちの目にはにどう映るのだろう。

 

アルテモナスは島の中心地だ。島に10台しかないタクシーのうち1台が停まっている。ここのキオスクで500円ほどの色鉛筆セットを買う。ここには他にも雑誌や書籍、文房具やお土産物など様々なものが売られている。

 

そのままエグザベラの村まで歩き、松の木の下に佇む教会を描く。古くからある有名な教会らしく、家主のトマスさんに絵を見せたら名前を教えてくれた(失念してしまったが)。

 

途中で見かけた車。長いこと停めてあったのか、ホコリが積もったボンネットを見るといろいろな種類の足跡がついていて面白い。

 

遠くからでも目を引く、まさにブーゲンビリア乱舞。

 

シフノス島の最終日。プラティの宿は島の東海岸に位置しているので、7時ころには日の出を望むことができる。5日間の滞在を終え、3番目の島、ミロス島に向かうため昼前に宿を退去する。港へのバスは本数が少ないので、家主のダフネさんが車で送ってくれた。ご主人トマスさんが栽培したケッパーのピクルスをお土産にどっさり貰う。サラダに入れるのに重宝しそうだ。親切な二人には今年もお世話になってしまった。

 

ミロス島へは高速船ではなくフェリーなので、航行中はずっとデッキに出て景色を楽しむことが出来た。

 

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滞在9日目〜12日目 トリピティ(ミロス島)

2時間ほど進むとミロス島が近づいてくる。ここもサントリーニと同じくカルデラの島だ。そのせいか、海面に突き出た岩は奇怪な形が多い。

 

フェリーから島を見上げると訪れる村が確認できた。左上の小高いエリアがプラカ、右上が宿泊するトリピティの町だ。海に面している家々はクリマの集落。

 

定刻から少し遅れてミロス島の港アダマンタスに着く。目抜き通りにある代理店に行き、名前を告げるとスタッフがトリピティの宿まで車で連れて行ってくれる。宿に直接向かわず、まずは港の旅行代理店で事前にチェックインするのは昨年も同じシステムだったので、この島の特徴なのかも知れない。

 

宿はかなり広いアパートメントタイプのPasithea Deluxe。改築されたばかりのようで、内装は新しい。海を見渡せるバルコニーはバドミントンができるほどのスペースがある。

 

まずはスーパーマーケットを探して日用品の買い出しだ。歩いて20分ほどのところにアルファマーケットなる大きなスーパーを発見。密を避けるために、店内には15人以上の客が入れないよう入り口で番号札を受け取るようになっていた。

 

ここでもギリシャヨーグルトを買う。たいてい1キロ容器で売っており、値段は5ユーロ前後だ。たくさんの種類が売られており、基本的にプレーン味だが、メーカーによって微妙に味が違う。他に飲み物やパスタ類など食料品を買いだして宿の冷蔵庫にしまう。

 

ミロス島2日目。何もない道をてくてくと40分ほど歩き、島の北側にあるフィロポタモスの集落に向かう。グリーンのビーチ、断崖、ギリシャ正教会、家、倉庫、遺跡などが狭いエリアにギュッと集まっている。

 

宿のバルコニーから日没を描く。この時間帯は魅力的なのだが、あっという間に太陽が沈んでしまうし、気温も下がっていて水彩絵具がなかなか乾かないので制作は難しい。

 

同じくバルコニーから今度は早朝の様子。ブーゲンビリアの枝を失敬してきてコップに挿し描いてみる。

 

3日目はクリマの漁村に向かう。トリピティの宿から歩いて30分ほどだ。小さなビーチやレストランもある。小さな正教会(礼拝堂)の扉が開いていたので入ってみる。10畳ほどのスペースにイコンや聖具が並んでいる。

 

クリマの村。マンドラキアやフィロポタモスともどこか似ている小さな漁師の村だ。扉や窓が色とりどりに塗られ、1階は倉庫、2階が住居になっている。

 

宿方面に戻り、今度はプラカの丘を登る。古城跡から一望できるポイントがあるので、眼前に拡がる海と教会を描く。ここは有名な夕日スポットで、日没前には大勢の旅行者が詰めかけるが午後は閑散としていた。

 

最終日は頼んでおいたタクシーで港まで向かう。ミロス島はちょうど200年前の1820年にミロのヴィーナスが発掘された島だ。船の乗り場にはルーヴル美術館からの返還を求めるポスターも掲げられているが、実現は難しいだろう。

 

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滞在12日目〜14日目 イア(サントリーニ島)

最後の滞在は再びサントリーニ。14日目の夜にこの島からパリに戻るフライトなので、ここには2泊する予定とした。港まで頼んでおいたハイヤーに乗って町まで向かう。約40分の道のりのなか、車内ではトランスポーターのニコスさんと会話する。曰く、「日本人はDiscipline(規律)を守るから、コロナの感染をうまく抑えている。我々は旅行者が来てくれないと困るが、来すぎて島にウィルスを持ち込まれても困る」。まさにその通りだ。

 

最後の宿泊先はイアのStudio 2 persons Oia Amazing view!!。今回滞在した5つの宿の中で部屋は最も狭いが、宿代はいちばん高い。ブルードームの真横でバルコニーからの眺めが最高なので、これは致し方ないところ。とは言っても同エリアに並ぶ超高級スイートに比べると格安だ。部屋にはGoogleマップを頼りに直接向かう。周辺は迷路のようだが、近づくとオーナーのJackieさんがバルコニーから手を振ってくれたのですぐにわかった。彼女はイギリス人だが、かなり前にサントリーニの魅力に取り憑かれ、イアに住みながらいくつかのアパートメントを経営しているそう。

 

とてもフレンドリーなJackieさんから部屋の説明を受けたあと、さっそく室内から一枚描いてみる。時刻は夕方に差し掛かっているので海の色は柔らかく、若干逆光気味の落ち着いた情景だ。

 

歩いて5分ほどのところのバス停付近に食料品を買いに行く。外に出てみるとあらためて旅行者の少なさに驚かされる。昨年は道を歩くのも一苦労なほどだった。

 

と思ったが、日没前にサンセットビューで有名な古城に行ってみると、どこにいたの?と思うくらいの旅行者が集まってきている。さすがにサントリーニのイア。コロナの夏でもこのエリアは別格のようだ。

 

あっという間に太陽が沈んで夜が訪れる。宿に戻りバルコニーから外を眺めているとだんだん眠くなってくる。

 

翌朝はくっきり晴れている。7時過ぎの日が登り始めるころの眺め。情景が時間帯によってハッキリと変化して楽しい。

 

近くでブーゲンビリアを摘んできてコップに挿す。鮮やかなローズ色で、絵の中にアクセントが生まれる。

 

宿から1分のところにあるお土産物屋で地元の陶器を買う。魚や鳥、オリーブの樹などがモチーフになっているようだ。

 

この日(13日目)の午後は、ギリシャに来て初めての曇り空。夕方には一瞬パラパラ降ったりして、夏のエーゲ海でも雨が降るんだとちょっと驚いた。18時過ぎからブルードームと日没の空を描く。

 

ギリシャの滞在も今日が最終日。この日は夜のフライトでパリに戻ることになっている。通常は宿を11時にチェックアウトだが、次の宿泊者はいないので家主のJackieさんが17時くらいまでいていいよと言ってくれる。このへんが民泊の良いところ。重い荷物を持って数時間ウロウロしなくてすむのでこれは相当ラッキーだ。

 

天気も申し分なく、ラストスパートをかけて朝から数枚を描く。イアの中心地は宿泊費は高いが見どころが多く、やはり泊まってよかったと思える場所だった。昨年もイアは描いたが、カルテラドスから時間を描けて来ていたので、ここまで踏み込んだ取材は出来なかった。

 

荷物の準備を済ませ、部屋を片付けてからバスでフィラに向かい、今度は空港行きのバスに乗り換える。さすがに今度はバスを逃したりということもなく、フライトの1時間以上前に無事にティラ空港に到着することができた。

 

いきなりのPCR検査から始まって、コロナ禍での滞在で若干の不便もあったが、朝から晩まで14日間充実の取材をすることが出来た。やはりゴージャスなサントリーニ島、素朴な良さのあるシフノス島、変化に富んでいて見どころが多いミロス島。とくサントリーニは昨年あれほどいた中国人やアメリカ人の姿がほとんどなく、かわりにEU圏内からの訪問客が多かったように感じた。しかし総じて旅行者の数は圧倒的に少なく、島の人々にとっては複雑な心境に違いない。

 

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