2019年と2020年の9月に訪問。ギリシャといっても広いが、訪れたのはエーゲ海に浮かぶキクラデス諸島のサントリーニ島、ミロス島、シフノス島、セリフォス島の4つ。濃紺の海に純白の建築物、乾いた大地に手付かずの自然。それらが絡み合い、今まで描いてきたどの情景とも違う面白さに夢中になった。
サントリーニ島(Santorini / Σαντορίνη)
人口15,000人、伊豆大島と同じくらいの面積。大昔の火山の噴火によって出来た異形の島だ。上から見ると三日月型で、カルデラであることがよくわかる。マグマが固まって形作られた褐色の大地の上に白い集落がびっしりとひしめき合っている。
フィラ(Firá / Φηρά)
サントリーニ島の首都でもあるフィラの町。主要なバスの発着所でもあり、旅行者はだいたい訪れることになる。断崖の上にまるで迷宮のように白い家々が建てられている。建物の多くは滞在者向けのヴィラやレジデンススイート(宿泊施設)だ。
フィラの町の少し南のエリア。ギリシャ正教会の白いドームと、黒褐色の断崖とのコントラストが面白い。
サントリーニを描いていて面白く感じるのは、明色と暗色、遠と近、高と低などのコントラストがひとつの画面のなかにギュッと集まるからかも知れない。
有名なカルデラのある西側だけではなく、平地と水平線が広がる反対の東側もいい感じだ。
イア(Oia/ Οία)
サントリーニもうひとつの目玉がイア。フィラから山沿いの道をバスで走ること20分で着く。最初に訪れたとき、あまりに現実離れした景観と旅行者の多さに驚いた。
ここまで青く濃い海の色を見たのは初めてかも知れない。特に日差しの強い正午前後はくっきりして目が痛いほどだ。
夕方になり太陽が傾いていくと、強かった海の色や白い建物とのコントラストも少しずつ和らいでいく。
イアの町の西端のあたりで。丸くコロッとした形の正教会は威容というものをほとんど感じさせず、絵の中に取り入れたくなる存在感がある。
滞在していた宿のバルコニーから。時間帯によって情景がガラリと変わって面白い。
イメロヴィグリ(Imerovigli / Ημεροβίγλι)
イメロヴィグリにはフィラから北に歩いて30分ほどで着く。サントリーニ島とは実は大きなカルデラ(火山の火口)で、我々が島と呼んでいる部分はその海面に突き出た外輪山部分である。イメロヴィグリに突き出たにあるスカロス・ロックのあたりに立つと、そのことがなんとなく実感できる。
イメロヴィグリからフィラの街のほうを見る。夕照が建物や斜面に当たり、暖かい色に包まれている。
ここもフィラやイア同様、崖の斜面に白い建物がびっしりと集まっている。
日没時。崖の端まで歩いていくと、太陽がティラシア島の向こう側に沈んでいく様子を一望することが出来た。
ピルゴス(Pyrgos / Πύργος)
ピルゴスは島の中心から少し南寄りの内陸の町。空港やアティニオス港から比較的近い。イアやフィラに比べたら旅行者は少なく落ち着いた雰囲気の町だ。あまり観光地化されておらず、島の住人たちにとっても人気の町のようだ。
ピルゴスの町は標高が高く、高台まで登ると遠くフィラやイアまで見渡すことができる。
ミロス島(Milos / Μήλος)
現在ルーヴル美術館にあるミロのヴィーナス(アフロディーテ)が発見された島として名高いミロス島。他にも名だたる彫像が出土しており、紀元前はちょっとした職人の島だったのだろうか。
アダマス(Adamas / Αδάμας)
島に船で来た場合はアダマスの港に着く。旅行代理店やレンタカー会社にバスやタクシーも集まっている島の中心地だ。レストランやカフェ、宿泊施設も多い。
マンドラキア(Mandrakia / Μανδράκια)
島の北にあるマンドラキア。港というか住居はわずかで集落のような場所だ。色とりどりの倉庫が並んだ入り江に小舟が停泊している。
入り江部分は透き通ったエメラルドグリーンだ。逆に外海のほうはくっきりと青い。ここは常に北風が吹くエリアだそうで、外洋は白波が立っている。
プラカ(Plaka / Πλάκα)
ミロス島の中心地、プラカ。車は入ることが出来ないこぢんまりとした落ち着いた町だ。200年前、ここの近くでミロのヴィーナスが発見された。
カストロ(城塞跡)の頂上まで登っていくとミロス湾や教会を見下ろせるポイントに出ることが出来る。この島のハイライトのひとつだ。
フィロポタモス(Firopotamos / Φυροπόταμος)
島の北にある漁村。エメラルドグリーンのビーチ、教会、住居、遺跡、漁船、倉庫などが小さなエリアにギュッと集まっている。
小さな教会とグリーンの海、そして後ろにそびえる険峻な崖とのコントラストが面白い。
クリマ(Klima / Κλήμα)
ミロス湾に面したクリマ。マンドラキアやフィロポタモスともどこか似ている小さな漁師の村だ。扉や窓が色とりどりに塗られ、1階は倉庫、2階が住居になっている。
ここでは日没の様子もよく見ることが出来る。
海との距離が近く、風が強い日には2階にまで波しぶきが飛んでくる。逆に穏やかな日には海底の石や泳いでいる小魚の姿をはっきり見ることが出来る。
サラキニコ(Sarakiniko / Σαρακίνικο)
島の北側にある人気ビーチ。火山灰が長い時間をかけて固まったとか。「月面のような」という形容がぴったり。
ここまでバスは走っていないので、レンタカーかバイクなどで来るしかないのだが、それでも多くの人で賑わっている。
カスタナス(Kastanas / Καστανάς)
島の東側にあるシークレットビーチ。まったく人の手は入っていない。悪路を走ること数十分と、来るまでがちょっと大変なので、訪問者もあまりいなかった。
シフノス島(Sifnos / Σίφνος)
ミロス島からフェリーで北に1時間ほど。あまり観光地化されていない75000km2(奄美大島と同じくらい)ほどの島だが、見どころは多かった。
カストロ(Kastro / Κάστρο)
島の東海岸に位置するカストロ村。海に少し突き出た丘の上に建てられた白い町並みが目を引く。カストロ(=キャッスル)の名の通り、城壁に囲まれた形跡がある。
そのカストロ村の裏手にひっそりと存在している7人の殉教者教会(Church of the Seven Martyrs)。強い北風と荒々しい白波が砕ける岩場にポツンと佇んでいる。
プラティ(Poulati / Πουλάτη)
島の東岸にあるプラティの村。村といっても海を見渡す斜面にポツンポツンと民家がまばらに建っているだけだ。岩場の環境の悪いところに小さな修道院(Panagia Poulati)もある。
宿泊先のプラティの民家。窓も多く、キクラデス様式のインテリアもなかなか凝っていて、描いていて楽しい部屋だった。敷地内の猫も入ってくる。
クリソピギー(Chrisopigi / Χρυσοπηγή)
島の南東に位置するクリソピギーの修道院(Chrisopigi Monastery)。北風もあまり届かない静かで落ち着いた場所にある。それにしてもシフノス島は実に教会や修道院が多い島だ。
ヘロニソス(Cheronissos / Χερρονησος)
シフノス島の北端の村、ヘロニソス。ヤギの住む岩場に囲まれた辺境の集落だ。バスも1日4本しか走っていない。宿泊先のバルコニーから昼と夕暮れの海を描く。
エグザベラ(Exámbela / Εξάμπελα)
シフノスの中心地アポロニアから南に行くとエグザベラの村に着く。遠くからでも目を引く丘の上の教会(名前不詳)。寄り添うように生えている松の木が印象的だ。
セリフォス島(Serifos / Σέριφος)
ギリシャ神話でペルセウスがメデューサの首を使って悪人を石に変えたとされる島、セリフォス島。シフノス島から北にフェリーで1時間だ。
ホラ(Chora/ Χώρα)
ホラの町はセリフォス島の中心地。小高い丘に白い家々がびっしりと並び、迷路のように入り組んでいる。
朝の太陽が海面に強く当たり美しく光っている、まだ海が青くなりきる前の時間帯だ。
島の象徴、アイオス・コンスタンティノス教会。午後2時くらいの時間で、逆光気味だった教会正面の壁に光があたり始めた頃だ。
ホラの町の頂上付近から下に降りる路地を見下す構図で。下り階段が入り組んでいて面白い。
ホラの町の裏側から。町に夕暮れの光が当り、美しく照らされている。風車が並んでいるだけあって、風が強く吹くエリアだ。
フォレガンドロス島(Folegandros / Φολέγανδρος)
人口750人、村落は3つしかない小さな島。サントリーニとミロスの中間に位置しているので、船も毎日出ていて行きやすい。年配の人がゆっくり過ごす島といった印象だった。
ホラ(Chora/ Χώρα)
標高200メートルに位置するホラの町。島の中心だ。崖の斜面に建つパナギア教会や、可愛らしいカストロの路地など、画題は多かった。
アガリビーチ(Agkali / Αγκάλη)
バスで行くことが出来るアガリビーチ。風がない日は船の影が海底に映り、船自体が宙に浮いているように見える。
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