フランス南部

フランスには大きく分けて13の地域圏があるが、その中でも中央から南に位置する場所を紹介。

コート・ダジュール(Côte d’Azur)

ニースを中心とした紺碧海岸コート・ダジュール。パリから800キロほど離れており、車で10時間、電車で5−6時間、飛行機で1時間。カンヌからマントンまでの約60キロ、そして北の山間の町を含めたアルプ=マリティーム県には様々な画題があふれている。気候も温暖で恵まれた土地だ。

アンティーブ(Antibes)

アンティーブ(Antibes)はカンヌとニースの中間にある海沿いの町。城壁跡に囲まれた旧市街や豪華クルーザーの停泊するヨットハーバー、白砂のビーチなど見どころは多い。

 

考古学博物館のスロープを登ったところからピカソ美術館のほうを見て描く。時間帯は夕方で、光が旧市街に当たり美しい。

 

グリマルディ城を改装して出来たピカソ美術館を見上げる構図で。写ってはいないが、右側はド・スタールの最期のアトリエ。

 

ヨットハーバー越しに灯台と要塞(Fort Carré)を捉えた構図で。天気が良いと遠くアルプス山脈やニースの街並みも見える。

 

手前は小さめのヨットが並び、灯台の奥のほうには豪華クルーザーが停泊している。

サン=ポール=ド=ヴァンス (Saint-Paul-de-Vence)

サン=ポールは丘の上にある小さな村。ニースから北西に20キロほどのところにある。城壁に囲まれた旧市街の中には細い路地や坂道が迷路のように広がっている。村の入口に車を停め、中には徒歩で入る。

 

マーグ財団美術館方面からサン=ポールを見る。まだ朝なので太陽は向かって左奥にあり、村のシルエットはほぼ逆光だ。遠くには地中海の水平線も見える。

 

村の入口付近から、見上げるような構図で。サン=ポールは鷲ノ巣村のなかでも整理された観光地だ。公衆トイレや水飲み場(L’eau potable)が充実しており、一日中滞在していても不便を感じたりということはなかった。

 

村の北側から遠くサン=ジャネの頂きを望む。よく見ると岩山の途中にも集落が点在している。眺めるぶんにはいいが、実際にそこに住むのは大変だろう。

 

夕方7時過ぎ。朝と同じくマーグ財団美術館のほうからの眺めだが、太陽光が真逆になっていて西日が美しく村を照らしている。

 

カンヌ(Cannes)

映画祭で有名なカンヌ。コート・ダジュールではニースに次ぐ大きな街だ。目抜き通りのラ・クロワゼット通りから、手前のビーチと向こうに少し盛り上がった旧市街、シュケの丘を描く。

 

絵のモチーフとしてのカンヌは、海・山・街・人のバランスがとれた場所だ。

 

マントン(Menton)

イタリア国境に接するマントン。ニースやカンヌほど大きくなく、どこか親しみやすい街だ。建物もイエローオーカーやピンクで、ちょっとフランスとは思えない色合い。歩いているだけで楽しい気分になってくる。

 

街の高台から見下ろす構図で。マントンの建物は固有色が強くそれだけで絵画的なのだが、逆に色を自由に使える油彩画でそれを表現するのは難しい。

 

街の象徴サン・ミシェル・アルシャンジュ教会と、その後ろにそびえるウルス山。コート・ダジュールの海沿いの街で、ここまで山が近くにあるのは珍しいのではないだろうか。

 

ヴィルフランシュ=シュル=メール(Villefranche-sur-Mer)

ヴィルフランシュはニースから東へ6キロほどにある小さな町。オレンジやピンクに塗られた建物が、丘の斜面にびっしりと集まっている。車の駐車スペースがほとんどなく、パーキングには苦労した。

 

波の少ない落ち着いたビーチとはどちらかというと年配の人が多く、ヒップホップがガンガン流れていたりということはなかった。

 

エズ村(Èze Village)

崖の上の村、エズ(写真の左上)。なぜこのようなところに村を?と思うが、かつて異国の敵から守る防衛の意味もあったという。いまは異国からの観光客でいっぱいだ。

 

村を見下ろすポイントから。傾斜度30度の細い坂道を延々と登っていき、ようやくたどり着く。この周辺は高級別荘が点在するエリアだ。

 

村の植物園に入り、細い階段を登って村の頂上に出るとおなじみの絶景ポイントに着く。晴天の午前中はサン=ジャン=カップ=フェラの岬もよく見える。

 

この光景を求め、世界中から観光客が集まってきている。

 

村の中は細い路地と階段、坂道の連続で迷宮のよう。教会裏の墓地からフェンス越しに村や植物園と、その下にひろがる海を描いた。

 

コート・ダジュール(アルプ=マリティーム県)その他

カロ村(Carros Village)。山間のこぢんまりとした鷲ノ巣村だ。歩いている観光客はほとんどいない。

 

宿泊していた町、ガティエール(Gattières)。鷲ノ巣村だが愛想はなく、ほとんど観光に力を入れていない印象だった。地元の人が集まる小さな広場で。

 

サン=ジャネ(Saint-Jeannet)。険しい岩山の麓に作られた鷲ノ巣村だ。上のカロ村もガティエールもサン=ジャネも車で15分足らずで行き来できる。

 

 

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プロヴァンス(Provence)

パリから車で7時間ほど。温暖な気候に恵まれた土地。オリーブ畑やぶどう畑が広がる平野、急峻な岩山、そして崖の上に建てられた鷲ノ巣村・・。画題は多く、見どころに事欠くことはない。

ゴルド(Gordes)

プロヴァンスのリュベロン地域圏の町。崖の上にらせん状に道が走り、そこに沿うように建物がびっしりと並んでいる。まるでロード・オブ・ザ・リングに出てくるミナス・ティリスのようだ。

 

少し離れたところからゴルド全体を展望できるポイントがあったので、そこから制作。朝(上)と夕方(下)とでは光が逆になり面白い。

 

上の展望ポイントから少し下がった位置から。手前に小道や松、糸杉を入れてみた。

 

ボニュー(Bonnieux)

同じくリュベロン地域圏にあるボニュー。町に入ると上り坂が続いており、そのまま上っていき中央の高台のあたりから見下ろしの構図で。落ち着いた夕方の光が美しい。

 

ルシヨン(Roussillon)

赤土や黄土(オーカー/オークル)の土壌に建てられた町、ルシヨン。町全体がピンク色に染まっている。遠望できるポイントがあれば嬉しいのだがなかなか見つからず、村の入口付近の駐車場のあたりから描いた。

 

オペード(Oppède)

オペードは住民1200人の小さな村。日本ではあまり知られていないようだが、歴史も古く、現地では人気の村だ。訪問者も多い。旧市街(Oppède le Vieux)から糸杉越しに、13世紀に建てられたといわれる城塞とロマネスクの教会を描いた。

 

モーベック(Maubec)

宿泊していた村、モーベック。2000人ほどが住む小さな村で、ゴルドやルシヨンと違って観光客は(多分)ゼロだ。暑い日中は出歩く人もほとんどいない。岩山をバックに古い教会や時計塔が風情を醸し出している。時計の針は12:20を指したままピクリとも動かない。

 

モーベックで滞在していた部屋。中庭に面しているので部屋から絵が描ける。陶芸家の家主さんが作ったピッチャーや皿をモチーフにさせてもらった。

 

 

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オクシタニー(Occitanie)

プロヴァンスから西に広がる一帯がオクシタニー地方。古代ローマ時代から栄えていた歴史ある地域だ。2023年にセヴェンヌ山脈の麓に滞在し、その周辺を回った。

 

サン=ティポリット=デュ=フォール(Saint-Hippolyte-du-Fort)

拠点にしていた町、サン=ティポリット=デュ=フォール。ガール県のセヴェンヌ山脈の麓に位置する。いわゆる観光地ではなく、どこにでもありそうなちょっと垢抜けない地方の村だ。

 

村にはいくつか川が流れている。ほとんど雨が降らない9月ということもあり、いくつかは干上がっていたが、水が残っている場所があったので、橋の上から取材。

 

サイクリングコースになっている橋の上から。素焼きの屋根、山、糸杉と松。南仏らしい情景だ。

 

滞在していた宿のバルコニーから。画布を木枠に張ったり、下塗りをしたり、続きを描いたりは、すべてこのバルコニーで行っていた。蚊が出なければ満点なのだが。

 

ソーヴ(Sauve)

ソーヴはガール県の人口2000人弱の村。川に囲まれているが、訪れた9月上旬はほとんど干上がっており、川底がむき出しになっていた。

 

橋を渡り村のなかに入る。坂道を登っていくと、こぢんまりした広場があった。カフェや店も集まっているので村の中心なのだろう。プラタナスの樹影が建物に出来ており、それに惹かれて制作。

 

ミアレ(Mialet)

ネットなどで目星をつけ、いざモチーフの場所まで行っても意外と絵にならないことも多い。この日はアンデューズという村を訪れたがピンとくる場所がなく、予定変更してそこから北のほうに向かってみた。

 

ガルドン・ド・ミアレ川に沿って北上していくとミアレという村にたどり着く。人口600人の小さなコミューンだ。国道沿いからカミサール橋(Le Pont des Camisards)を描いてみた。

 

ラ・ロック=シュル=セーズ(La Roque-sur-Cèze)

ラ・ロック=シュル=セーズはオクシタニー地方ガール県でも有名な観光地。ガイドブックなどには必ず登場する村だ。ぶどう畑に囲まれた丘の上に、糸杉と密集するように家々が建つ。

 

手前のワイン畑を入れた構図で。構図はシンプルなようでいて意外と難しく、時間がかかってしまった。

 

近くにはソタデ滝(Cascades du Sautadet)がある。滝には立入禁止の看板が立っているが、訪れる人たちは見向きもしない。

 

ル・グロー=デュ=ロワ(Le Grau-du-Roi)

モンペリエの南東、地中海に面した町、ル・グロー=デュ=ロワ。電車で来ることもできる風光明媚な町並みに、多くの旅行者が集まってきている。

 

港で制作する難しさは、イーゼルを立てる場所。野外レストランや港湾労働者の邪魔になるような場所で描くのはまずいし、手前に大きな船がいきなり停まるようなところでも困る。この場所はその点で制作しやすいところであった。

 

マルセイヤン(Marseillan)

マルセイユに似た名前の港町、マルセイヤン。広大な内海、トー湖に面している。船着き場も港もすべてこぢんまりしていて、あっという間に一周できてしまうほどだ。

 

サン=ギレム=ル=デゼール(Saint-Guilhem-le-Désert)

オクシタニー地方エロー県にある村。フランスの美しい村ランキングなどにもよく登場する。人口わずか250人ほどだが、世界遺産ジェローヌ大修道院を擁する。ゆるやかな上り坂に作られており、奥には峻険な岩山がそびえ立っている。

 

サン=ギレム=ル=デゼールからエロー川に沿って少し南に行くとディアブル橋(Pont du Diable)がある。悪魔の橋と名づけられているが、周囲は実にのどかな雰囲気だ。橋の下では川が入江のようになっており、人々がサップで遊んだり泳いだりしている。

 

エゲーズ(Aiguèze)

アルデーシュ川峡谷に面しているガール県の村、エゲーズ。こちらもフランスの美しい村のひとつとされているようだ。少し離れたところから見ると、断崖のへりに建てられていることがわかる。北に向かって描いているので、夕刻になると光が左側に当たり美しく調和してくれた。

 

 

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コルシカ(Corse)

地中海で4番目に大きな島、コルシカ。約250年前にフランスの領土となった。2022年に初めて訪問。レンタカーで一周したが、ダイナミックな自然と美しい村々、そして人情味あふれる人々の住む島だ。

スプロンカト(Speloncato)

スプロンカトはコルシカ北部、オート=コルス県にある村。人口は300人ほど。

 

スプロンカトは標高のかなり高い場所にあるが、さらに登っていくと村を見下ろせる場所に出た。身を寄せるように建っている村の様子が印象的だ。周囲にはロバくらいしかいない環境だが、しばらくすると珍しく人が車でやってくる。話してみると村長さんだった。

 

カフェやレストランも集まる、スプロンカトの唯一の広場。

 

ベルゴデール(Belgodère)

滞在していた村、ベルゴデール。スプロンカトと同じくコルシカ北部、オート=コルス県の小さな村。住民は600人ほど。

 

小さな村なので、あっという間に一周出来てしまう。民家のひしめく入り組んだ路地裏からの構図で制作。

 

落ちてゆく夕日が美しいが、同時に気温も下がってくる時間帯なので水彩絵具が思うように乾いてくれず、難しい。

 

サンタントニノ(Sant’Antonino)

スプロンカトで描いているとはるか遠くの丘の上に小さな村の姿を発見。試しにGoogleMapを頼りに車で向かってみると、サンタントニノという魅力的な村だった。

 

村の最上部まで登り、見下ろす構図で描いてみる。

 

こちらは村の入口付近から。石畳のゆるい階段がまるで迷路のように続いている。

 

リル=ルッス(L’Ile Rousse)

リル=ルッスはコルシカ北部の海岸沿いにある、比較的大きな町。プラタナスの巨木に囲まれた中心部は旅行者で溢れていた。

 

屋外カフェテラスとくつろぐ人々に惹かれて描いてみる。

 

ペンタ=ディ=カジンカ(Penta-di-Casinca)

ペンタ=ディ=カジンカもオート=コルス県の村だがコルシカ東部に位置している。海の向こうにはモンテ=クリスト島やナポレオンの幽閉されていたエルバ島が見える。

 

村役場となりの小さな広場に腰をおろして制作。小さな水場もあってありがたい。

 

滞在していた部屋の庭に植えられている小さなりんごの木。描いていてふと見上げると、母屋のバルコニーからこちらを眺めている家主さんと目が合う。

 

ボニファシオ(Bonifacio)

コルシカ最南端に位置するボニファシオ。城壁に囲まれた町だ。

 

断崖のへりまで歩き、町を遠くから描いてみる。真南を向いているせいか、エトルタと違って陰影が現れにくく、少々描きづらく感じた。

 

サント=リュシ=ド=タラノ(Sainte-Lucie-de-Tallano)

サント=リュシー=ド=タラノは、島の南に位置するコルス=デュ=シュド県、人口400人ほどの山間の小さな村だ。

 

村を一望できる場所から。まるで寄り添い合うように家々が密集している。

 

滞在していた宿のバルコニーから。

 

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